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音の生まれる時 松下敏幸レクチャー&コンサート

京都芸術センターで行われた、
音の生まれる時 松下敏幸レクチャー&コンサートに行って来ました。

1部;松下敏幸氏のレクチャー
<弦楽器の歴史> 
弦楽器発祥の地は約500年前のクレモナ地方とのこと。クレモナ地方とは北イタリアの盆地で湿度が高く冬は寒い地であったとのこと。商業・宗教が盛んであり、イエズス会や貴族の保護を受けて発展したとのこと。アマティやストラディバリなどの優れた弦楽器製作者が生まれた。1715年(ストラディヴァリ65歳)には多くの楽器が氏と弟子によって作成されたが1747年没後は約1世紀偉大なマエストロが輩出されなかったため、名器も作成できなかったとのこと。(道具や図面は残っていても後継者が途絶えてしまったようです)
1937年に学校制度がしかれ、製作者が輩出されるようになった。
松下氏とコンサート出演者の方々のご経歴はこちら

<ヴァイオリン製作の流れ>
ヴァイオリンの前板の材料になる木は、赤モミやカエデ。北イタリアの木材を使用される。やはり産地にこだわるのは、土・水などのミネラルが良質であり谷が近くにあるためだそうで、木は月に一度、満月から月が欠けていく時に伐採(デクレッセント)されるとのこと(引力の関係で・・・)。
図面引きはピュタゴラスの定理に沿った形で、丁寧に行われる。
ヴァイオリンの形ができた後の表面の艶出しにはサンドペーパーではなく、研草(とぐさ)
という草を天日干ししてカットしたものを使って、カッティングするようにこするとのこと。そうしないと、ニスの乗りがよくないようです。(とぐさは日本の宮大工が使っていたと)
オイルニスは茜色の染料を混ぜたものを使用(茜色の染料は京都の染料屋さんから仕入れ)。
一度塗っては10日乾燥させ、さらに塗って・・・を20回繰り返すそうです。
乾燥させるには夕方5時頃の時間帯が(自然光の加減で)良いため、その時間に合わせて仕事をする、と。
年に4本しか製作できないそうです。

<魂柱の大切さ>
直径6mmの魂柱の位置が微妙にずれるだけで、大きく音が変わることを実証。
(浦川氏が登場され、演奏してくださいました)
まずは、肩あての有無で;肩あてを使った時の方が、音が響き、よく伸びました。ニスを守るという意味でも肩あてはあったほうが良い、とのことです。
魂柱が正しい位置にないと、音が詰まったように聴こえました。

2部;コンサート 
[曲目]
ハイドン 弦楽四重奏曲ハ長調 Op.76 No.3 「皇帝」より第2楽章
(長原氏、千葉氏、須田氏、上森氏)
J.S.バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043より第2楽章
               (長原氏、千葉氏、田中氏)  
モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調K.364より第3楽章
               (長原氏、須田氏、田中氏)
パガニーニ カンタービレ 二長調 Op.17
               (浦川氏、田中氏)
クライスラー ウィーン奇想曲 Op.2
               (浦川氏、田中氏)
D.ガブリエッリ リチェルカーレ第5番
               (上森氏)
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番 サラバンド
               (上森氏)
サン・サーンス 白鳥~組曲「動物の謝肉祭」より
               (上森氏、田中氏)
J.マスネー 歌劇「舞姫タイース」より瞑想曲
               (浦川氏、田中氏)
ドヴォルジャーク ピアノ五重奏曲 第2番 イ長調Op.81より 第1楽章
               (長原氏、千葉氏、須田氏、上森氏、田中氏)
アンコール; ハイドン 弦楽四重奏曲ハ長調 Op.76 No.3 「皇帝」より第3楽章

[演奏者]
 浦川 宜也氏 Vn
上森 祥平氏 Vc
須田 祥子氏 Va
田中 美千子氏 P
千葉 清加氏 Vn
長原 幸太氏 Vn

   



追加;演奏者の方々が使用された楽器はすべて松下氏製作のものです。
  浦川氏 Violin 「カンタータ」2006年製作
  長原氏 Violin  2008年(つい2週間前完成)製作、まだ名前はついていないそうです←つい最近の新作とは思えない、伸びやかで明るい音色でした!
  千葉氏 Violin 「アルゴ」2005年製作
  須田氏 Viola 「カブライア」2006年製作
  上森氏 Cello「ジュピター」2006年製作←とっても深くしっとりした音色でした
by morpheus-cello | 2008-11-03 16:50 | Music-2, classic